【印象に残るプランニング ep.1】
私のフリープランナーとしてのアイデンティティが固まった、と思えたウエディングです。
そのおふたりは、新郎様が当時50歳、新婦様が当時30歳、歳の差20歳のご夫婦で、ゲストは30人ほどの小さな結婚式をご希望とのこと。私はそれを聞いて、このおふたりはどうして惹かれあったのだろう?なぜこの30人を招いて結婚式を挙げようと思ったんだろうと、単純に疑問に思ってしまったんです。
そこでストレートに不思議だなと思うことについてお聞きしていったら、このおふたりは、ふたりがこれから大事にしていきたい結婚観を大切に大切に今日まで育んでこられて、おふたりにとって選び抜かれた30人のゲストを選んで私のところに来てくれた状態ということがわかったんです。そんなおふたりと、おふたりが選んだ珠玉の30人のゲストに私は何ができるだろう。それは、おふたりと30人のゲストみんなの価値観をひとつひとつ全部、結婚式で丁寧に表現することでした。
おふたりのお話から「飾らない」「滋味深い」という言葉が多くでてきたので、お料理はフルコースで豪華に、ではなく、科学調味料を一切使わない優しい味の料理を提供するレストランでの中華料理。また、「美味しいパンを食べたら、一口で隣の人にも分け与えられる気持ちをもって生きたい」という想いがあったので、ケーキを美味しいカップケーキにしてみんなでシェア。おふたりともご出身は西日本なのに、何か北海道に答えがあるかもしれないと移住し出会ったという、その決意の表れとして、北海道らしい、牛が寄り添うクッキーを並べたりもしました。そう、カップケーキもクッキーも、アイテムとしては普通。特段クリエイティビティでもないけれども、価値観の定まっているおふたりには、それが表現できるアイテムをひとつひとつ選び、組合せていくことが本当の「オリジナル」だと思えたんです。ゲスト全員のこともヒアリングをして、30人の方に喜んでもらえる内容をふんだんに取り入れました。新婦様は以前雑貨屋さんにお勤めで、バルト三国が好きとのこと。そこで天井に飾ったフラッグはリトアニアの生地を使って作成し、引出物には世界各国の雑貨をセレクトしてお渡ししたり。結婚式の結びに、「今日は本当にいい一日だったね」という時にみんなと飲みたいものは美味しいコーヒーだということで、全員にネルドリップでコーヒーを落として提供したりも。
本当はこうあったら嬉しい、という価値観からひとつひとつ見立てていったウエディング。「あ、全部理想が叶うならこんな結婚式できたらいいな」というものを編み出すことができました。これまでどういう人生があって、分かれ道があって、選択があって、どこかで選択をひとつ違えていたらこの場にはいない。全てがふたりの個性を最高に引き出して、密接に絡み合っているもので、誰かのコピーではない。アイテムひとつひとつはシンプルでも、そのひとつひとつがこのおふたりでなければ表現できないオリジナルの選択にしたいと思ったんです。
「オリジナルウエディング」の「オリジナル」を英字辞典でひくと、たくさん意味はあるんですが、「誰も思いつかなかった」「コピーされていないもの」「アーティスティックであるもの」と定義されていました。「is not a copy」 おふたりでなければこの組み合わせは再現が不可能な結婚式。場所も牛のクッキーも引出物も、すべてがおふたりの個性を最高に引き出して、密接に絡み合って「誰も思いつかなかったこと」になっている。ああこれが本当のオリジナルだと、胸を張って言えるようになった結婚式で、ここから私の道筋ができたなと言えるきっかけになり、こういう結婚式を自分のアイデンティティにしようと思いました。