ウエディング業界の仲間から「困っている新郎新婦様がいるので相談に乗ってあげてほしい」というお話を聞いたのが始まりでした。あるプロデュース会社で結婚式を進めていましたが、4ヶ月経っても会場もプランも決まらず不安になっているとのこと。おふたりのご希望は「都内近郊で100名近いゲストを迎えて野外ウエディングを挙げたい」とのことでした。ご要望の条件が整う会場は限られています。ちょうど同日に、野外ウエディングをご希望のお客様の結婚式を担当していて、唯一と言っても良い会場候補となる場所を私が抑えていたのです、最悪「結婚式ができない」ということになりかねない。私自身、基本的には1日1組のお客様で対応していますが、状況を聞けば聞くほど、おふたりがウエディング業界に対する不信感を抱えられていると感じました。私に何ができるかを考えた末、もう1組の新郎新婦様にご相談。というのも、その新婦様もウエディングプランナーだったので、思い切って率直にお話をしてみたのです。すると「一緒にやりましょう! むしろ同じ業界にいる人間として結婚式ができない人が生まれてしまうということがすごく残念なことだから」というお返事をいただくことができました。
広大な土地での野外ウエディング。それも2組同時にとなると、どうしても目が届かないことが出てきてしまいます。そこで7人のウエディングプランナーを巻き込んでプロジェクトチームを作り上げました。ウエディングチームを2つに分け、私は両方に目を配る現場監督のような役割で結婚式に臨むことに…。
おふたりには「どうしても10月1日に結婚式をあげたい」という強いご希望がありました。実はその日はご新婦様の誕生日。お誕生日に入籍をして、結婚式、披露宴を滞りなく済ませてからハネムーンに向かう飛行機の中で誕生日を迎えたいという強いお気持ちがあったのです。素晴らしい旅立ちになるようにという願いを込めて、ウエディングコンセプトは「ボンボヤージュ」と名付け、旅立ちを思わせるようなツールをふんだんに使ってコーディネートいたしました。
しかし、結婚式前日まで雨が降っていて、小雨が残る中、当日を迎えてしまいました。雨天時のプランもご用意していましたが、おふたりが思い描く結婚式は完璧にはできなくなってしまいます。どうにかしておふたりの想いを叶えたいという気持ちから「このまま行きましょう!」と決断。“土砂降りの雨が降るのでは…”という不安と戦いながら準備を進めていたところ、なんと雨が止んでくれました。あの時は、「ウエディングの神様っているんだ」と思いましたね(笑)。おかげさまで、全て滞りなく終えることができました。新郎新婦様はもちろん、親御様も大変お喜びになられて、「本当にやってよかった」と思いました。結婚式を終えた後、新婦様は飛行機の中でお誕生日を迎えることができたようです。