アヴェニールクラス東京
籔田 宏美さん (3/7)
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籔田 宏美さん (3/7)

チーム一丸で作り上げた全盲のカップルの結婚式

印象に残るプランニング

一番印象に残っているのは、グッドウエディングアワードでもお話させていただいた新郎新婦さまが全盲で、
ゲストの方にも全盲の方がいらっしゃった結婚式です。どんな結婚式にしたいのかという話になった時にお二人が最初におっしゃったのが「全員が楽しめる結婚式」でした。

しかし、そのお話をいただいた時に、そもそも打ち合わせもどうやって進めていったらいいのか分からない状態だったため、正直そのお二人のご希望を叶えるのは難しいのでは、とその時は思ってしまいました。

お二人がこれまで参列した結婚式というのは、時々疎外感を感じてしまうことが多かったようです。そのお話をお二人から聞いた時に、楽しくて幸せな空間であるはずの結婚式の中でそのようなことが起きているというのがなんだか悔しくて。

結婚式というのはみんなが楽しくて、お二人をお祝いをする気持ちで溢れているというのが当たり前じゃないですけど、そうあるべきなのに、会場の中でそういった想いをされている方もいるというのが残念で悔しいなと思いました。

普段、新郎さまは白い杖を持って歩いていらっしゃるんですが、「せっかくタキシードを着ているので白杖を持たずに入場したい」というご希望がありました。新郎さまのご入場は大丈夫だったんですが、普段、盲導犬を連れて歩いていらっしゃる新婦さまと新郎さま、その盲導犬の退場の時にどうしても左に曲がってしまうという問題がありました。

それをどう解決したかというと、新郎さまがゲストの方たちとハイタッチしながら退場していただくというご提案をさせていただきました。結果、お二人と盲導犬がまっすぐ退場することができ、会場にいらっしゃったみなさんが笑顔になった瞬間でもありました。

他にも打ち合わせの中で結婚式場の中の構造をお二人に説明する際に、テーブルなどを模った厚紙をA4の紙に貼ってメインテーブルの場所などを手で触って分かるようにしました。それをお伝えした時にお二人が「結婚式ってこういう風に席が並んでいたんだ」と初めて知っていただいたようです。そういったところから一つひとつ作り上げていった結婚式でした。

視覚で伝えられない分、こちらの説明はすべて言葉になるんですが、言葉だけの説明ではどうしても限界があるので、触って分かっていただけるようにシールや厚紙を使って説明させていただきました。新婦さまが着用されるウエディングドレスも形の説明をするために厚紙をドレスの形に切って、それを触っていただいてお伝えしました。こちらができることは全部したいと思っていました。

お二人に「いつから目が見えなくなったのか」という、本来ならば聞きづらい質問もさせていただき、いただいた答えを元にいろんな工夫をしました。お二人の立場になっていろんなことを考えていく中で様々な発見をし、それを取り入れることができました。大変だったんですけど、お二人が打ち合わせの度に毎回すごく喜んでくださるのでそれがすごく嬉しかったです。目が見えない分、お二人には何が用意できるのだろうかと考えました。

そして、この結婚式はチームで作り上げた結婚式でもありました。「全員が楽しめる結婚式」を形にした時に、お二人がこの結婚式を世に広めたいとおっしゃっていて、実はグッドウエディングアワードに応募したのも、自分がこの結婚式を舞台で発表することができたらより多くの方に伝えることができるなと考えたからなんです。

後日、お二人から結婚式に参加されたゲストの方々からの感想をメールで全部まとめて送ってくださったんです。その中にはお二人と同じように全盲の方からの感想もあったんですが、点字のメニュー表や、現場スタッフが鈴を付けてどこを通っているか分かるようにした工夫について、「まるで魔法の国にいるようだった」という感想をいただけたのがすごく嬉しかったです。

グッドウエディングアワードの発表の当日もその結婚式を挙げたお二人、そして盲導犬のニキータちゃんが会場にいらしてくださいました。発表の後にお二人とお話させていただいたんですが、お二人は結婚式を迎えるにあたり、そんなにたくさんのスタッフが動いていることを知らなかったため、「あの結婚式ができたのは会場のみなさんのおかげなんですね」とすごく喜んでいただけました。

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