Ohwada Hiroko Wedding
大和田 浩子さん (3/6)
Ohwada Hiroko Wedding
大和田 浩子さん (3/6)

さまざまな葛藤を繰り返しながら伝える「ありがとう」の気持ち

病院の結婚式で見えてくるのは家族のすばらしさ

【印象に残るプランニング ep.2 病院での結婚式】

新婦様が末期がんのカップルは新郎様からご相談がありました。新婦様がまだお元気な頃に看護師さんに「結婚式したい」とお話しされていたそうで、そこから相談に至ったとのことでした。しかし、新郎様は「彼女が喜ぶならば」と思いながらも「正直、結婚式を挙げるのがいいかどうかわからない」と悩んでいらっしゃいました。ご本人たちもそうですが、ご家族のことを考えると申し訳なさのほうが大きい、と。新郎様のお母様は「あなたが決めたことだから」と賛同してくださいましたが、お父様は「入籍はしなくてもいいんじゃないか」とおっしゃっていたそうです。背負うものが大きいですから、ご家族の気持ちもよくわかりました。

それでも入籍した理由を伺うと、新郎様は「僕が後悔したくなかったから」とおっしゃいました。それを聞いて私は「お父様に対して申し訳ないと思わなくてもいいのではないですか」とお伝えしました。ご自身が決めたことを申し訳ないと思うことは新婦様に対して失礼だと思ったんです。次に彼は「お祝いをもらうのも気が重い」とおっしゃったので、「『ありがとう』が礼儀」とお話ししました。おふたりとも周りを気にしすぎではないかと。甘えるときは甘えていいと思うんです。「申し訳ない」より「ありがとう」のほうが断然うれしい。そういう背景もあり、テーマは「不器用な大人カップルの初めて『ありがとう』を素直に言える日」にしました。

新婦様とは病室でお会いして、ご両親のヒアリングからすべてしっかりと行いました。新婦様が小学生の頃、お父様が今のお母様と再婚されたそうで、「私は母の言うことを聞かない悪い子でした」というお話もうかがいました。今はお母様とも仲が良く、「お父さんと結婚してもらってよかったと思います」とおっしゃったので、それを伝えましょうということになりました。
結婚式当日、新婦様はほぼ眠っていらっしゃる状態でしたので、あらかじめ彼女のインタビューをもとに作っておいたメッセージを読ませていただきました。また、新婦様のご両親に「どんなお子様でしたか?」というインタビューもしました。病院での結婚式ですが、結婚式をつくることに変わりはないです。たとえ「余命1ヵ月です」と告知されても未来はありますから。その時間軸をつくるのが私の仕事です。

後日、新郎様のお姉様からメールがありました。結婚式をすると聞いたときは戸惑いもあり複雑なお気持ちだったそうですが、「大和田さんに会ったら大丈夫だと思えて、結婚式をする意味がわかりました」とおっしゃっていただけました。病院での結婚式は、特にご家族が大きく関わることになるので、「家族ってすごい」と感じますね。

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