【印象に残るプランニング テーマ:ひとつに】
最近、2歳下の後輩の結婚式を担当しました。ウエディングプランナーですが、“ナシ婚”派で。2年前に入籍し、結婚式は挙げていなかったのですが、親御さんからの「おばあちゃんのためにしてあげて」とのお願いで、ようやく重い腰をあげました。お相手の新郎様も「面倒だからやらなくていいよ」というタイプでしたので、最初から苦難の連続でしたね。式場選びにも苦戦しましたし、テーマ決めの際には、新郎様が「そもそもテーマを設ける必要があるのか」というスタンスで(笑)。こうした中、いろんな意見の食い違いを積み重ねて入籍したカップルでしたので、思いをひとつにする作業が一般的なカップルよりも多かったのではないかと感じたんですね。そこで、おふたりの人生がひとつの道になるという意味を込めて「ひとつに」というテーマを新婦と考え、決定しました。
話し合いを進めていくうちに、後輩でもある新婦様は曲がったことが嫌いで、粋なことが好きで、納得できないと動かない性格だということがわかってきました。プランナーだけど結婚式をしたくない理由も、「ありきたりなことはしたくない。かといって、どんなことがしたいのかが見えてこないから」ということでした。そこで、和装にしたいというお話から、伝統的な和婚に特化し、それをおふたりらしくアレンジしようと決めました。日常の延長線にある結婚式を表現したかったので、当日の支度は自宅でさせていただきました。いつものように朝食をとり、ご家族がいる中で化粧を施し白無垢姿になる。また、新婦様の手紙は、結婚式ではなく、自宅を出る前に親御さんの前で読みました。ゲストのみなさまの前で手紙を読むことは、彼女にとって“正解”ではなかったのだと思います。そして式場に入る前に、おふたりが同棲していた時に住んでいた家の近所の神社に立ち寄りました。門出にふさわしい“夫婦の木”という2本のクスノキがある神社でしたので、ここでロケーションフォトを撮ってから挙式に向かいました。自宅での準備は簡単なことではないですが、ご要望があれば実現可能だという前例にもなりましたね。
もうひとつ、新婦様がこだわったのが誓いの言葉です。最近は、「誓いますか?」と問われて「誓います」と答える「誓いの問いかけ」スタイルが多いですが、彼女はそれはしたくないとの考えでした。親から子へ受け継いできた家族の想いなどを手紙にしてもらったほうが心に響くからと。そこで、ご両家の親御さんに書いていただいたものを読むという形をとりました。新婦様とお母様のエピソードには心を打たれました。新婦様の「私が悩んだときにお母さんが『自分のためじゃなくて目の前の誰かのために生きなさい』といってくれた言葉が人生の指針になっています。これからは彼のために美味しいご飯を作って、家を守っていきたいと思います」という言葉に、思いは代々つながっていくんだなと感じました。これはすばらしい演出で、参加したスタッフもみんな感動して泣いていましたね。