シェ・トヤ
布施 秀治さん (3/7)
シェ・トヤ
布施 秀治さん (3/7)

ご近隣のみなさまに見送られ、笑顔が溢れる結婚式に

シンプルだが、二人にとって大切なことが実現できた一日

【印象に残るプランニング】
この地域は昔から自宅から花嫁が支度して出発するというような儀式的なものがあります。とはいえこのご時世ですので、なかなかそういった昔ならではの結婚式の儀式というか、そういったことをされる方というのはずいぶん減ってきました。

そういった昔ながらの結婚式を昔からお二人に関わってきた親御さんやおじいさま、おばあさま、そしてご近所の方たちみんなに見て欲しいとあるカップルさんがおっしゃって、自宅から和装でお支度をして始まった結婚式というのが私の中で印象に残っています。

ご近隣の皆さんの笑顔と涙に見送られ、地元で有名な神社に向かいます。自宅から支度して送り出すという事はご両親にとって思い出深い物になったと仰っていました。ご両親世代はそれが当たり前の事だったから、時代とともに薄れてしまった伝統を子供たちが再現してくれたのは嬉しかったのでしょうね。

神社ではたくさんの子供たちと父兄の皆さんがお出迎え。新婦様は小学校の先生です。大好きな先生の花嫁衣装に子供たちは大喜び。ここでもたくさんの笑顔に囲まれて、厳粛な雰囲気の神前式も和やかに進みました。当会場にお越しいただいてからは主役とは言えゲストをもてなす側に早変わり。こだわり抜いたメニュー内容、新郎新婦にまつわる食べ物でお越しいただいた皆さんに『美味しい楽しい』時間をお過ごしいただきます。

メニュー考案のキーワードは『お寿司に合う料理』。簡単に言えば和食なのでしょうが、当会場はフレンチレストランが手掛けるゲストハウス。和食で良ければ『和』を強みにされている会場様を選ばなかったのは何で?とお話しすると『トヤさんが一番料理が美味しかったから』とわかり易い回答でした。

『難しい事も出来るように一緒に考えよう』というスタイルも買っていただいていたようで、『和』に合う創作フレンチの考案が始まりました。キッチンとおふたりが直接打合せればスマートだったなと今思えば反省ですが、『お二人の事は僕が』『料理の事ならうちのプランナーに任せろ』といういらないプライドと、お二人の意向とキッチンの創作があり、お二人のためのメニューが完成しました。

とは言え創作料理ですから、お二人はともかくご両家のご両親に満足いただけるか心配でしたので、当日を迎える前に実際のメニューを皆さんにご試食いただき全員にOKをいただいた上でご提供しました。

ちなみになぜ『お寿司』が料理のキーワードだったかというと、新婦様のお父様が寿司職人でいらっしゃり『お父さんと一緒に握ったお寿司をみんなに振舞いたい』という事で、お寿司に合う料理の考案に至りました。

当日のお料理に関しては提供直後からゲストには賞賛いただく事ができました。1皿目は地元漁港で採れた新鮮な魚をお醤油で、2皿目はブイヨンでじっくり炊き上げた大根にフォワグラを添え、3皿目は真鯛のポワレに季節の蕪とカキノモトの霙餡を添え…皆さん一皿一皿に舌鼓を打たれたご様子でした。

肝心のお寿司の提供ですが、スムーズに進行するよういろいろと準備していたのですが、流石は職人と職人の娘、こちらの不安を吹き飛ばす見事な速さで人数分のお寿司を握り上げられました。お父様は白衣にねじり鉢巻き、新婦様は打掛の振袖に襷を掛け、サーブは新郎さんも手伝って、あっという間に70人分のお寿司は売り切れました。お二人もお父様も、ゲストの皆様も満足、満腹なひと時をお過ごしいただきました。

ちなみにこのお寿司のシャリは兼業農家の新郎様が春から丹精込めて育てた新米です。実はこの新米、ウエディングケーキにも使用しました。新米を製粉し、米粉を使ったウエディングケーキに仕上げました。米粉を使用したスポンジはしっとりしていて甘みがあり、それだけでいただいても美味しいんですよ。米処だからできる演出かもしれません。このお二人が作りたかった一日は、お世話になった全ての人に結婚の報告と、誰もが美味しいというお料理で楽しい時間を過ごしていただく、自分たちが真心こめた品でゲストをもてなす事で感謝の気持ちを伝えること。シンプルではありますが、お二人にとって大切な事が実現できた一日だと思っています。

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